多忙でも無理なく続く 読書と生活の優先順位のつけ方
多忙な日々を送る中で、読書時間を確保することは容易ではないと感じている方が多いかもしれません。仕事や家事、育児など、目の前のタスクに追われる中で、「本を読む時間があったら、まずは休息したい」「読むとしても、何から手をつけたら良いか分からない」といった状況に陥ることもあるでしょう。
読書は、知識を得たり、視野を広げたり、あるいは心を休めたりと、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれます。しかし、そのメリットを理解していても、いざ自分の日々に読書を取り入れようとすると、「時間がない」という壁にぶつかります。
実は、この「時間がない」という感覚の背景には、私たちの生活における様々な活動の「優先順位」が隠れています。読書を無理なく続けるためには、単に時間を捻出するだけでなく、生活全体を見渡し、読書にどのような位置づけを与えるかを考えてみることが有効です。本記事では、多忙な方が読書と生活のバランスを取り、無理なく読書時間を確保するための優先順位のつけ方をご紹介します。
なぜ「優先順位」が重要なのか
私たちの時間は有限です。その限られた時間を何に使うかによって、日々の質や将来に得られるものが変わってきます。読書も例外ではありません。もし読書を「できたら良いな」という程度の優先順位に置いていると、緊急性の高い他のタスクに常に後回しにされてしまい、結局時間が取れないままになってしまいます。
読書を無理なく続けるためには、読書を「必須ではないけれど、自分にとって重要な活動の一つ」として意識的に優先順位を上げる必要があります。これは、他の全てを犠牲にして読書に没頭するという極端な話ではありません。生活全体を見直し、読書のための「わずかな隙間」や「意図的に作る時間」を確保するために、他の活動との兼ね合いを調整していく考え方です。
生活における時間の使い方を可視化する
優先順位を見直す第一歩として、まずはご自身の時間の使い方を把握することから始めましょう。
- タスクリストの洗い出し: 日々行っているタスク(仕事、家事、育児、通勤、食事、睡眠、娯楽など)を書き出してみます。細かなルーティンも含めて、できるだけ具体的にリストアップします。
- タイムログをつける: 可能であれば、数日間、実際に何にどれくらいの時間を使っているかを記録してみます。アプリや手帳など、やりやすい方法で構いません。
これは、ご自身の時間の使い方に「気づく」ための作業です。「思っていたよりも、この時間に〇〇をしていたな」「この作業に意外と時間がかかっているな」といった発見があるはずです。
読書に充てられる可能性のある時間を見つける
時間の使い方を可視化できたら、次に読書に充てられる可能性のある時間がないかを探します。
- 既存のスキマ時間: 通勤・移動時間、待ち時間、休憩時間、就寝前のわずかな時間など、既に存在する細切れの時間です。これは「5分から読める 多忙な人のためのスキマ時間読書法」などで詳しく解説しています。
- 見直し可能な時間: 無意識に使っている時間、あるいは少し減らしても生活に大きな支障がない時間です。例えば、スマートフォンを眺める時間、目的もなくテレビを見る時間、完璧を目指しすぎて時間がかかっている家事などです。
- 意図的に作る時間: 朝早く起きる、夜寝る前に少しだけ時間を確保するなど、これまで他のことに使っていた、あるいは使っていなかった時間を読書に充てることを決めます。
これらの時間を特定する際に重要なのは、「絶対にこの時間でなければならない」と固く決めすぎないことです。「この時間帯に読めたらラッキー」「ここが読書に使えるかもしれない」という柔軟な姿勢で臨みます。
他の活動との優先順位を見直す
読書に充てられる可能性のある時間が見つかったら、次にその時間を確保するために、他の活動との優先順位をどう調整するかを考えます。
これは、「何かを完全にやめる」ということではなく、「少しだけ質や量を変えてみる」という視点で行うのが無理なく続けるコツです。
- スマートフォンの時間を少し減らす: 通知をオフにする、特定のアプリの使用時間を制限するなど、意識的に触る時間を減らしてみます。その減らした時間で、数ページだけでも本を開いてみます。
- 完璧主義を手放す: 家事や仕事で「完璧でなければ」と思っている部分を少しだけ緩めてみます。「これくらいで大丈夫」という基準を設けることで、心に余裕が生まれ、読書に向かうエネルギーが生まれることがあります。
- 「ながら時間」を見直す: 食事中にテレビを見たり、移動中にSNSをチェックしたりする時間を、オーディオブックを聴く時間に変えるなど、「ながら時間」の質を変えることを検討します。
- 他人との比較をやめる: 他の人がどれくらい読んでいるか、どれだけ多くの活動をこなしているかと比較するのをやめます。自分のペースで、自分にとって必要な活動に時間を使うことに集中します。
- 「NO」と言う勇気を持つ: 全ての誘いや頼まれごとに応じる必要はありません。時には断る勇気も、自分の時間を守るためには必要です。
これらの見直しは、決してご自身を追い詰めるためのものではありません。「もし、この時間を使わないで、少しだけ読書に充ててみたらどうなるだろう?」という実験のような気持ちで取り組んでみます。
読書を「重要だが緊急ではない」活動として位置づける
多くの人は、緊急性の高いタスク(締め切りがある仕事、すぐにやらなければならない家事など)を優先します。読書は多くの場合、「重要だが緊急ではない」活動に分類されます。しかし、長期的に見れば、読書による学びや心の状態の安定は、日々の緊急タスクをより効率的にこなすための土台となり得ます。
読書を日々に組み込むためには、この「重要だが緊急ではない」活動に、意識的に時間を割り当てる必要があります。まるで歯磨きや食事のように、日々のルーティンの中に読書のための小さな時間を「予約」するイメージです。
- 例えば、「朝食後の10分」「寝る前の15分」など、特定の時間帯を読書に充てると決めます。
- 「通勤電車の中では必ずオーディオブックを聴く」といったように、特定の行動とセットで読書時間を設定するのも効果的です。
このように、読書を「後で時間ができたらやろう」ではなく、「この時間は読書にあてる」と事前に決めておくことで、他のタスクに流されてしまうのを防ぎやすくなります。
まとめ:無理なく続けるための「ほどほど」のバランス
読書と生活の優先順位を見直すことは、多忙な日々の中で読書時間を無理なく確保するための重要なステップです。
まずはご自身の時間の使い方を把握し、読書に充てられる可能性のある時間を見つけてみてください。そして、他の活動とのバランスを「少しだけ」調整してみることから始めましょう。完璧を目指す必要はありません。他の活動を完全にやめるのではなく、少しだけ減らしたり、やり方を変えたりするだけで、読書のための時間や心の余裕が生まれることがあります。
読書を「重要だが緊急ではない」活動として捉え、日々のルーティンの中に意識的に時間を取り入れてみてください。この優先順位の見直しは、読書習慣が無理なく続き、ひいては日々の生活がより豊かになるきっかけとなるはずです。