多忙でも無理なく 本を読むのをやめる判断術
多忙だからこそ考えたい「読むのをやめる」選択肢
日々時間に追われる中で、「読書時間を確保しよう」と意気込んでみたものの、なかなか読み進められず、いつの間にか本が積まれていくという経験をお持ちの方は少なくないでしょう。特に、意を決して手に取った本が、いざ読み始めてみると「なんとなく合わない」「思っていた内容と違う」「読むのにすごく時間がかかる」といった場合、多忙な中ではさらに負担に感じてしまうことがあります。
「せっかく買った(借りた)のだから最後まで読まなければ」という気持ちから、無理に読み続けようとしてしまい、結果として読書自体が億劫になってしまうこともあります。しかし、多忙な人が無理なく読書を続けるためには、「合わない本を無理に読み続けない勇気」も大切なスキルの一つです。
この「読むのをやめる判断術」は、決して読書を諦めることではなく、むしろ限られた時間の中で本当に価値のある読書体験を積み重ねるための、前向きな選択です。ここでは、罪悪感なく本を読むのをやめるための考え方と、その判断基準についてご紹介します。
なぜ、最後まで読む必要はないのか
読書の目的は、多くの場合、知識を得る、感動する、気分転換をする、新しい視点を得るなど、本を通して自身の内面に変化や豊かさをもたらすことにあります。「本を最後まで読み終えること」自体が目的ではありません。
多忙な中で、興味を持てない、あるいは今の自分に合わない本に無理に時間を費やすことは、大きな機会損失につながります。その本に費やすはずだった時間を、本当に読みたいと思える別の本や、他のリフレッシュ、あるいは休息に使う方が、結果として読書習慣を無理なく続け、日々の充実感を高めることにつながる可能性が高いのです。
また、「最後まで読まなければ」という固定観念は、読書に対する心理的なハードルを高め、積読が増えるにつれて罪悪感を生み出す原因にもなりかねません。読書を「義務」ではなく「楽しむもの」「自分の成長に繋がるもの」と捉え直すことが大切です。
合わない本を見極めるサインと判断基準
「この本、読むのをやめても良いかもしれない」と感じるサインには、いくつかのパターンがあります。ご自身の読書中に以下のいずれかに当てはまるか、少し立ち止まって考えてみてください。
- 読むペースが極端に遅くなる、あるいは止まってしまう: 読むこと自体に集中できず、なかなかページが進まない、あるいは読む気が起きず手が止まってしまう状態が続く場合。
- 内容に興味が持てない、心が動かない: 読んではいるものの、書かれている内容が頭に入ってこない、感情が動かない、続きを読みたいという気持ちにならない場合。
- 理解が難しい、疲れる: 使われている言葉が難解すぎる、構成が複雑で追えないなど、読むのに過剰なエネルギーを使い、疲れてしまう場合。
- 期待していた内容と違う: タイトルや紹介文を見て想像していた内容と異なり、自分の求めている情報や体験が得られないと感じる場合。
- 「読まなければ」という義務感で読んでいる: 純粋な興味や読みたい気持ちではなく、「買ったから」「借りたから」「話題になっているから」といった理由で無理に読もうとしている場合。
これらのサインがいくつか重なる場合、それは「今の自分に合わない本」である可能性が高いと言えます。もちろん、少し難しい部分があっても乗り越えたいと思える本もあれば、後から面白くなる本もあります。しかし、多忙な中で限られた時間を使う本としては、これらのサインは「読むのをやめる」あるいは「一時中断する」ことを検討する十分な理由になり得ます。
「どの時点でやめるか」に明確なルールはありませんが、例えば「全体の〇%読んでも面白く感じなかったら」「〇分読んでみて心が動かなかったら」といった、自分なりの目安を持っておくことも有効です。
罪悪感なく手放すための考え方と具体的な方法
読むのをやめると判断した本に対して、罪悪感を抱かないための考え方と、具体的な次のステップをご紹介します。
罪悪感を減らすための考え方
- 本との出会いは縁: その本が「今の自分」にとって最良のパートナーではなかった、ただそれだけのことです。時期や状況が変われば、また面白く読めるかもしれません。
- 「何か一つ」でも得られたなら価値がある: たとえ最後まで読まなくても、数ページに目を通しただけで、タイトルを見ただけで、何か一つでも気づきや学びがあったなら、その本との出会いには価値があったと考えることができます。
- 手放すことで新しい出会いが生まれる: 合わない本に囚われる時間を手放すことで、本当に読みたいと思える素晴らしい本と出会うための時間と心の余裕が生まれます。
具体的な次のステップ
- 物理的に手元から離す: 購入した本であれば、古書店に売る、フリマアプリで譲る、友人や家族に渡す、図書館や施設に寄付するなど、手元から物理的に離すことが最も効果的です。「いつか読むかも」という気持ちが強い場合は、一時的に本棚の特定の場所にまとめておくのも良いでしょう。図書館の本であれば、速やかに返却します。
- 読書記録につける: 読書管理アプリやノートに、その本を「中断した」「合わなかった」などのステータスで記録しておきます。これは、単に途中で読むのをやめたのではなく、自分で意図して「判断」した結果であることを認識するための一助となります。
- すぐに別の本に移る: 読むのをやめたら、その場で別の「読みたい」と思える本を手に取ります。これにより、「何も読んでいない時間」ではなく、「別の本を読んでいる時間」にスムーズに移行でき、読書自体から離れてしまうことを防ぎます。
まとめ
多忙な日々の中で読書を無理なく続けるためには、すべての本を最後まで読まなければならないという考えを手放すことが重要です。読むのをやめるという判断は、決してネガティブなことではなく、限られた時間をより有効に使い、本当に価値のある読書体験を得るための賢明な選択と言えます。
今回ご紹介したサインを参考に、もし読み進めるのが難しいと感じる本に出会ったら、罪悪感なく「やめる」あるいは「中断する」という選択肢を検討してみてください。その判断が、あなたの読書生活をより豊かに、そして無理なく続けるための重要な一歩となるはずです。あなたの読書時間が、日々の忙しさの中での心地よいリフレッシュや学びの時間となることを願っています。